阿佐ヶ谷スパイダース『イヌの日』@本多劇場


演劇ユニット《阿佐ヶ谷スパイダース》率いる長塚圭史のターニングポイントになったといわれる『イヌの日』が初演されたのは2000年。


目下、下北の本多劇場で再演されている。


登場人物は、息子の友人たちを次々に誘惑しては肉体関係を持つ母親、小学校時代の同級生や近所に住んでいた子ら4人を20年近く(17年だったかな?)地下の防空壕に閉じ込めている息子、防空壕に閉じ込められた4人と息子の友人たち。


観劇の翌日、初演の映像を見返す。


再演を観た後では、初々しさが気恥ずかしい。


初演と大きく異なるのは、母親の役を加えることで、なぜ息子は4人を防空壕に閉じ込めなければならなかったのかという因果関係がきちんと描かれていること。


細かな台詞の修正や加筆、舞台の緩急も圧倒的に改善されている。初演では、間が長すぎたり、余計なものが入っていたりするのだけれど、それらがすっきり。


この5、6年の長塚の、そして阿佐ヶ谷パーダースの恐るべき成長ぶりがうかがえる。


センスのある劇作家だから、物語を紡げば、それは自ずと現代という時代を映す鏡ともなる。


同世代の他の劇作家たちの多くが‘等身大’の日常を描く中、長塚の作品にはそこに止まらない、小さな自分たちの世界に納まらないスケールのでかさがある。


多分それが長塚の作品が同世代だけでなく、広く受け入れられる理由だ。


とはいえ、私はただ単に長塚の描く不器用な人たちが好きだから、長塚の作品が好きなんだろうと思う。


《一途に愛するがゆえの、ただひたすら愛されたいがゆえの、純粋なまでの純粋さが生む狂気。》


長塚が描き続けているものだ。


理屈抜きで、長塚の作品はやっぱすげぇ好きだ。