「シラノ・ド・ベルジュラック」@新国立劇場


鈴木忠志の舞台が東京で上演されている。


今回全作品を観ることができたのは、いろんな意味で貴重な体験となったように思う。


昨日「シラノ・ド・ベルジュラック」を観劇。


「シラノ」で痛感したのは、演出家の要求に応えられるだけの身体性、力量のある俳優陣が舞台上に存在していないということ。


それは、「イワーノフ/オイディプス王」の時にもうすうす感じていることではあったものの、「シラノ」で強く印象付けられた。


そうした意味からも、この舞台での最大の収穫は、ほんの数分舞台に登場しただけの、‘山の手事情社’の女優であり、目下、鈴木忠志の下で活動している内藤千恵子だったように思う。


山の手の舞台でも注目している女優だったとはいえ、「シラノ」の舞台で感じた圧倒的な存在感は今まで感じた以上のものだったのではないだろうか。鈴木忠志の求める身体性を獲得している数少ない役者のうちの一人であったことは疑うべくもない。


そもそも歌舞伎などの古典芸能を観る場合を除いて、私の舞台を観る判断基準はどちらかといえば戯曲に偏っている。だが、鈴木忠志の舞台を観ていて不思議だったことには、私の関心は、戯曲云々より役者のほうにばかりいってしまった。


今後舞台を追い続けたいと思える俳優に出会ったのは久しぶりだ。それだけでも今回の舞台は私にとって特筆すべき貴重な体験であったといえる。